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二日酔いと肉争奪戦 |
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朝、目がさめて時計を見ると12時半。「やっべぇ〜、仕事だ!支度、支度、ゲッ、あったま痛ぇ〜、割れそうだ」とぶつぶつ言いいながらバスルームに飛び込む。シャワーを浴びると体がヒリヒリする。「こんな所にかすり傷が出来てるよ、痛すぎるぅ〜」その瞬間、昨日のあの悪夢が頭の中にフラッシュのようによみがえってきたのだ。「泥棒、寒い、孤独...、嫌悪感、頭痛、そして猫」と次から次と頭の中で高速でリプレイされる。熱いシャワーはそんな気持ちを優しく包み込んで嫌な気持ちを少し和らげてくれた。 「行っくぞうぉ〜!」と気合いを入れて部屋を飛び出した。その時、昨日の猫がすかさず俺の部屋に飛び込んで出ようとしない。「お前どうしたの?主人の所に帰りな。こっちおいで」そんな事は猫は聞く耳持たずに居座った。俺がしゃがむと猫は嬉しそうに駆けて来て俺に頭をなすり付け、前足を持ち上げ顔にキスしようとする。「ごめんな、俺今から仕事なんだよ。」と言い、ミルクもあげる時間もなく階段を駆けおりた。しかしその猫は俺の足元から離れず1階までついてきた。「バイ、バァ〜イ」猫は座って寂しそうに俺を見ていた。俺は頭痛と、猫を残してきた寂しさで気が重くなった。 お店に着くと自分の気持ちとは裏腹に元気良く「おはようございまぁ〜す!」と言いながら地下の着替え室に向かう。「仕事は仕事。二日酔いでもちゃんとしなくちゃ」しかし、自分が思っていたよりも遥かに気分が悪く吐き気が次から次へと来る。「これじゃ仕事になんないよな、とりあえず頑張るしかない」体にムチ打ちながら何とか「肉の切り出しと餃子の仕込み」を終えた。(こんな時の肉と餃子の匂いはまさに地獄。想像できる?)まかないのご飯もあまり食べれないまま、店は開店した。しかし、外の大雨のせいでさっぱりお客さんは来ず。そのまま店は閉店を迎えた。こんなに暇なのは今まで見た事がなかった。そして突然のチーフの提案で「しゃぶしゃぶ、すき焼きパーティー」を総勢15人近くで始める事になったのだ。「やっほぉ〜い!」といいたいところだが何せ昨日が昨日だけに、肉好きの俺が「勘弁してくれぇ〜!」と言いたいぐらいのバッドコンディション!「えぇ〜い、ここまで来たら食うしかないだろう!」いざ動こうとしたら、すでにウエイター、ウエイトレスの子が準備をしてくれてものの5分もかからずに宴会会場ができた。(この店の子達はみんな良く働くし、これがまさにプロなのだと感じさせられた動きだった)後はもう「頂きまぁ〜す!」の合図と共に肉争奪戦が繰り広げられ、あっという間にペロリ。でも、楽しかったぁ〜なぁ〜!やっぱり、しゃぶしゃぶ、すき焼きは大勢でワイワイ言いながら食べるのが一番なのだ。何だか、みんなの笑顔を見ていたら昨日の事が遠い話に思えてきて救われた気分になった。「本当にチーフ、みんな、有難う!」(ぐすんっ) こんなドラマ見たいな出来事はそうめったにはないが、いい経験になったのだ。今回の反省「酒に飲まれるな、自分の身は自分で守れ!」を再認識した日だった。みんなも飲み過ぎには気をつけようね。(俺だけかも?)ちなみに、もしまたあの猫がいたら飼おうと思っていたのだが彼の姿はなかった。少し寂しく、切なくなったのだ。 |