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夏のはじまりとその後の行方

<< contents 夏だ!夏だ!夏なのだぁ〜!「夏」と言われてイメージする言葉といえば、みんなは何だろう?俺が浮かんでくる言葉と言えば「公園の深緑の芝生のむせ返る匂い、白いTシャツ、海、枝豆とビール、バーベキュー」ってまたもや、コリもせずに「肉」を焼くのかぁ〜!俺の頭の中の潜在意識までにも...。(うぅ〜)いかんいかん、まだまだ修行が足りんのだ!仕事人は「第16話」でも話した通り「自分なりのストレス解消法」を見つけだし、なるべくならプライベートと仕事を頭の中で分けて考え、気分を上手く切り替えたいものだ。みんなの友達にもいると思うけど遊びに行っているのに仕事関係の話、場所、ビーパー(ポケベルの事)、セルラーフォン(携帯)と、まるで仕事の時と変わらない人。「全部捨てて頭空っぽにしろぉ〜!俺の話を聞けぇ〜!そんなに仕事が好きなら俺と今会ってどうするぅ〜!全然意味が無いぞう!楽しくないぞぉ〜!帰りたいぞぉ〜!」って思った事はないだろうか?(俺も実は言われた事が過去にあるんだけどさ。すまん。)とにかく、仕事も遊びもエンジョイ、エンジョイ、エンジョォ〜イなのだ!はぁ〜疲れた、さてと書くとするか...。

お店はまたもや大炸裂でグリルは歴代3位以内に入るステーキ売り数を記録したのだ。(忙しいのはいいのだけれど、か、体が...。ギクッ!イテッ!)でも連休あけで頭がボォ〜として何だか冴えない日だったのだ。(チーフ、皆さんすみませんでした)仕事が終って寿司バーの従業員と飲んで帰ろうと思って外に出たら「寒ぅ〜!何だこれぇ〜!」っと言うぐらい温度が下がっていてTシャツ、半ズボン、そしてサンダルの俺はブルブルブルゥ〜と凍える中、家に帰った。こんな日に風邪を引くような気がするのでみんなも気をつけよぉ〜な!夏風邪は長引くぞぉ〜!(クシュン!まさか...)

俺はこの連休中にある一人の女性に出逢って思わず人ごとでは無い話を聞く事になった。彼女の生き方、ニューヨークでしか味わえないさまざまな出来事、そして「その後、自分ならどうする?」といった感じだ。それでは、聞いてもらおう。

彼女と出逢ったのはそれはそれは小さなバーでお客は俺一人だった。壁はサンタフェ風のマッドな柑橘系色、どこからともなく来るお香の匂い、そして薄暗い店には今にも電球が切れそうなアンティークのシャンデリアと色とりどりのグラスに入ったキャンドルの炎が静かにゆらゆらと揺れていた。俺はカウンターに座ると濃いめのビールをオーダーして口の中で味わうように飲んだ。ふと、上を見上げるとガクの中に飾られた気取ったポーズのフレンチブルドックの写真。(うぅ〜、もう我慢できんのだぁ〜!ガッハッハッハッ!)てな訳で、ここは俺がいつも行ってるNOHOにあるバーなのだ!機会があったらお越しください!本題、本題!)彼女はここのバーメイドで話を聞いたらびっくりで全く同じファッションスクールの卒業生だった。その話で30分盛り上がった後、話は始まった。

「この店に入る前には何してたの?」

『ファッション業界でずぅ〜と働いてたんだけど転職して、バーテンダーになったんだぁ〜。でも、真剣に勉強したよ、バーテンダー。』

「どっかの店で? それとも学校?」

『あたしグリーンカード持ってるからお店で頑張ってたのよ』

「グリーンカードいいなぁ〜、どうやって取ったの?」

『結婚してたんだけど、最近、離婚したんだ』

俺はその時、何の言葉もかけてあげられなかった。実は以前、シェアメイトを探していた時に部屋を見に来てくれた人が離婚したばかりで、彼女自身精一杯明るくしていたが少しでもその事が脳に触れると今にも泣き崩れてしまいそうで恐かったし、話を聞ける程その時の自分にも余裕が無かった。

『でもねぇ〜、グリーンカードが取れたのはいいけど逆に落ちこんじゃって...』

「どうして? だってビザの事を気にしなくていいし、自由に働けるじゃない」

『それそれ、その自由があたしを苦しめたんだよねぇ〜。だってさぁ〜グリーンカードを持ってなかった時は拘束の中にも自由があったし、それでいいと思ってた。グリーンカード持ってないって事で業種も選べなかったし、今やってる仕事の言い訳もできたんだけど...いざグリーンカードを持つと何でも仕事が出来るって事が自分にプレッシャーを与えるし、じゃぁ〜あたしに何が出来るって思っちゃって、ずぅ〜と落ち込んでたんだぁ〜いわゆる他に責任転嫁が出来なくなって自由な分その責任や重みみたいなものがのしかかってきちゃってさぁ〜』

この話を聞いた時、俺は背中がぞっとした。もし俺がグリーンカードが取れたとすると、いったいその後はどうするのか?働くことには困らないが、それだけ...?頑張って修行して立派なシェフになって、いずれはお店も持ちたいなんて少し思ったりして。そんな日本でもやれる事がしたいがためにアメリカに来たのか?グリーンカードの持つ意味は自分にとってただの働くためのアイテムにしかすぎないのか?などなど、考えさせられた話だった。「そんなに欲しいのか?」と聞かれれば素直に「欲しい」と答えられるし、「アメリカにどうしてもいたいのか?」と聞かれれば、それも「イエス」と言える。でも、そのまだ見知らぬ自由の先にいったい自分に何が出来るのだろうか?そしてアメリカの移民法のワクの中で今まで生活していたのに「あなたはもう大丈夫」って突然言われて、いきなりワクの外にポォ〜ンとほうり出されて、どう動いていいか分からずに立ちすくむ自分を思わず想像してしまって恐くなったのは俺だけだろうか?要はグリーンカードが取れる前は「グリーンカード取得して自由に働きたい」が目標で頑張れたが取得後はこの目標が無くなる訳なのでこれから、グリーンカードを申請する人、そして申請中の人も取れた後の事を少し考えてみてはどうだろうか?あなたには、グリーンカードが取れたその先にしっかりとした目的や意味がある事を俺は祈りたい。

結局、彼女が悩んでいたのはグリーンカードが取得出来なかったので自分のやりたい仕事につけなかったとか、取れたからいい仕事につけると言う問題では無くて転職、離婚と立て続けにいろいろな事が起こり、しかし最後に残ったのは自分の身一つとグリーンカードだけになった時に「私はこの先、一人でグリーンカード(就労ビザ)を取得できたもののいったい何ができるのだろうか?」という悩みだった。彼女は多分、過去のしてきた事には後悔してはいないだろう。問題はその先の事だと思う。それと、人には生きていく中でいくつかの「人生のピリオド」があると思うが、彼女は今、そのピリオドを自分で打ち、これから新しい人生を強く前向きに歩こうとしている。

俺は彼女の常に模索しながらもチャレンジする生き方に、新たに別な勇気の出し方を見つけた。応援させてもらいます!頑張ってください!

これから海外に住もうと思っている人も少し「なぜ、来たいのか?住みたいのか?」という事を真剣に考えて欲しい。しっかり自分自身で決めた人はどんな事があっても後悔はしないだろうから...。