シェフの道ー第46話ー ハヤシさんとまさか!隣人が...。

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ハヤシさんとまさか!隣人が...。

<< contents 「そぉ〜れそれそれ、お祭りだぁ〜い!」おぉ〜いみんな!この1週間も元気に過ごしたかぁ〜?前回も話したがいよいよハロウィンまで1週間ちょいなのだ!我がレストランもお互いに衣装のさぐり合いが始まってるが誰1人として口を割る者はいない。「ねぇ〜ねぇ〜今年は何やるのぉ〜?」って聞いても、返って来る返事と言えば「う〜ん、まだ決めて無い」とか「まぁ〜ねぇ〜いろいろと...」とかすべてが曖昧なのだ。何せ我が店は1位の人はペアで今年はオーランド(ディズニーランド)の旅(ちなみに去年はマイアミ)、2位は賞金$300、3位以下も豪華な商品がずらりと並んでいるのだ。後は特別賞とか、とにかく盛り沢山なのだ。勝敗の結果はお客さんの投票によって決まる。もちろん我がグリルもチーフと共に作戦を日々練っている。あぁ〜だ、こぉ〜だと仕事の間に話しているのだ。こうなったら俺もやるしかない!衣装もだいたい決まって後は買い物のみとなった。う〜ん頑張ってせめて衣装代だけででも取らなくては...。(行くぜぇ〜!おぉ〜!)まぁ〜みんなも結果を楽しみにしていてくれぇ〜!それでは今日もバリバリ書くぞぉ〜!

ニューヨークは相変わらず不安定な天気で何を着ていいか分からないままこの1週間も終ったのだ。相変わらず体調不良なのだ。でも何とか気合いで乗り切ってるって感じかな。それでは、レストランについて書こう!

前半はもう皆さんお馴染みの「第6回まかない大作戦」はどうしても食べたかった「ハヤシライス(HASHED BEEF)」だったのだ。う〜んこれは大ヒットだったのだ。自分で作って自分で感動したのだ。みんなの評判は分からんがとにかく上手く出来たのは確かだろう。ハヤシライスについて少し語ろう。ハヤシライスとは「玉葱、牛肉などを細かく切って炒め、塩、胡椒で味付け、ブラウンソースを入れて煮込み、飯の上にかけた洋風料理」(広辞苑より)だそうだ。俺が聞いた話によれば「日本のハヤシさん」が考案したもので、洋風テイストだが実は日本人にも食べ易くなじめる味に、すなわちハヤシライスは本格的日本の料理なのだ。(本当かどうかは分からんのだ!間違っていたらごめん!)お店の方はお客さんの入りが少し悪いのだ。その理由は「メッツ対ヤンキース」の野球放送が始まったからなのだともっぱらの評判である。うちの従業員も仕事そっちのけで燃えに燃えているのだ。なんてったってオーナー自身が野球好きではもう誰もこのダルダル現象は止められる訳がないのだ。野球好きでは無い俺はみんなの熱が冷めるのをじっと待つしかないのだ。(早く終ってくれぇ〜!)おぉ〜と少し愚痴ってしまったのだ。いかんいかん。まっいっか、たまにはさ...。

そして後半のお店は可も無く、不可も無かったのだ。ところがその晩の事である。俺はハロウィンの買い出しで疲れ切って深夜にキャブ(タクシー)に乗った。そのキャブドライバーの話にとてもショックを受けたのだった。その話しと言うのは、彼はバングラディッシュの出身で渡米してもう28年。ある日彼はマンハッタン内でお客を探していた。たまたま乗せた人が自分と同じビルに住むアメリカンアフリカンの男だった。彼とはとても親しく、時にはファミリーで食事などもしていたらしい。しかしその時ドラバーの彼には予想も出来ない事件が起きたのだ。その隣人にホールドされたのだ。(ホールドとは拳銃を突き付ける事)彼は何が起きたのか分からず言われるがままお金を渡した。彼が信用していた隣人にこんな事をされるとは夢にも思わなかったはずである。ここだけの話しだが、それ以来彼はアメリカンアフリカンのお客は乗車拒否をしているらしい。それだけか他のアメリカンアフリカンによる車内の器物破損で多額の自己負担、極度の飲酒による暴力などなど彼いわく他の人種の人よりも遥かに多いらしい。と、彼は悲し気に言っていた。そして俺に向かっていきなり「こんな人にでもアメリカは教育費を負担してあげて、なぜもっと勉強したくて来ている諸外国の移民にはこの権利が得られないんだ。間違ってる!」(そう彼の娘もこちらの学校にまじめに通っている1人なのだが充分な教育を受ける事が出来ないらしい)とやり場の無い気持ちをお客の俺にぶつけてきた。俺はもこっちにいればいわゆる外人な訳だから当然にして彼の気持ちが痛いほど伝わってきたのだった。それにやはり外人が他国に住むと言うのは並みたいていの事では無い。理解はしてあげられるけれど、何もしてあげる事は出来ないのもまた悔しい。だって自分自身も今が精一杯で考えてあげる余裕すら無い。そして長く住めば住む程嫌な事もたくさん知り、英語が分かれば分かる程またもやいろいろな事実から目を背ける事が出来なくなる。悪い事ばかりでは無いが誰もが一つや二つの傷を背負いながらここアメリカに住んでいるのではないだろうか。そしてその話が終った後、俺達は車の密室内でしばらく沈黙せざるおえなかった。

みんなはこの話しを聞いてどう思うのだろうか?人を信じる事が出来なくなる恐怖を...。少し考えてみてくれ。

そして俺は長い1日を終えて床に着いた。(はぁ〜)

今回は少しヘビーな話しなのでこの辺で終るのだ。また来週、元気で会おうなのだ!そんじゃぁ〜なぁ〜。