シェフの道ー第99話ー 虐め(いじめ)について

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虐め(いじめ)について

<< contents 「店を辞めてから10日経った。依然として体の調子が悪い。吐き気は止まったものの体の発疹が増える。俺はどうしてしまったのだろう?考えても全く結論が出ず、毎日1日中抜け殻のようにテレビを見ている。内容はどうでもよく、ただ目を開いて真直ぐ前をみているだけ。目を閉じるとあいつの顔が浮かんで来て気分が悪くなる。また、イビラれる恐怖。もしかしてこれが「いじめ」だったのかとふと思う。」

*虐め(いじめ)...。
今まで生きて来て虐めた事も無ければ、いじめられた事も無かった。しかし、今回のこの事件で分った事は虐めている本人は虐めている自覚が無い事だ。聞けば『それはひろさんの為だから...』と、彼は言う。俺のため?そんな事は俺は望んで無かった。俺はただお客さんに迷惑をかけたく無い想いとセクションが円滑にまわる事しか考えていなかった。その事件から4日後、俺は片方のオーナーと話す事になった。会って一通り辞めた事情を話した。しかしオーナーも『彼も余裕が無かったし、それはいじめでは無くしごきだったんだよ。でも、その言い方はよく無いな。俺が見てる時はそんな感じには見えなかったな。』と言った。そうなのだ、虐めてる人は自分より立場が上の人の前ではその正体をさらさない。陰で虐めだおす。俺もそうだった。彼はオーナーの前ではニコニコと挨拶をしていた。自分の気に入ったやつの前では常にいい人でいた。あのにらみも、あの悪態も無い。しかし、その会話の後で俺は彼がその人の事をなじる言葉をいやと言う程聞かされた。(前のチーフ、キッチンのチーフ、オーナー、そして辞めて行った人の悪口を)これは彼が新メニューで忙しいからイライラしてしているものだと最初は思っていた。しかし、それは違っていた。それは彼の、今までつちかわれた性格だった。俺はオーナーと話している内に日本であった子供達の虐めの話しを思い出した。教師は現場を見ていないから『あんないい生徒がまさか?』と信じない。その生徒が気弱過ぎるだけだと気にしない。やっとの思いで仕返しされる恐さを押さえて、先生の所に言いに行くが簡単にあしらわれてしまう。その情報を聞いた虐めっ子がまた虐める。恐くて学校に行けなくなる。誰も自分を助けてくれないし、言った事を信じてくれないから。いったい彼等はどうすればいいのか?俺もこの出来事をシェフの道に書くのを最初は迷った。ひろはただ、しごきが厳しくて逃げただけだと思われたく無かった。しかし、数日が経ってそれでもいいと思って書いている。全部書き切れたわけでは無いが。もっと、たくさんの事をされたし言われていた。でも、虐めているヤツにどうしたら気が付かせてあげられるのだろう?それはアドバイスじゃ無くて虐めだと言う事を。俺は独り落ち込んでいる。でも、それが何に落ち込んでいるのか分からない。眠りに付けばイビラれている夢を見て夜中に腹痛に襲われ、吐く、痒い体、青白い顔。何でこんな事になってしまったのかいまだに分からない。こんな弱い俺では無いはずなのに。どんな事があっても仕事をする自身があった俺。まさか、こんなにイビラれ精神的に圧迫を受けるとは誰もが思っていなかった。俺は気が付かなかったが、他のシェフ、ウエイター、ウエイトレス、バーテンダーはみんな俺を心配していてくれた。アイツの怒鳴りに参っている俺を知っていた。店を辞めた後、誰も文句を言わなかったらしい。それどころか体を心配してくれた人が電話番号を送って来てくれた。本当に嬉しかった。ありがとう。

*虐めている事に気が付いていない、虐めをしている皆さんへ
今回の虐めは言葉の表現と顔つきだった。あなたのしている事は人間の心の「トラウマ」になる程、たいへんな事である。あなたに人の人生を変える権利は無い。思い通りいかないのはあなたに人を動かす何かが欠けているからです。そこに愛情が無い限りあなたのしている事は虐めです。人に意見を聞いてもらいたいなら、あなたが初めに見本となり愛を持って接する事です。それ無しでは絶対無理です。昔の自分の体験や経験が今のポジションや環境に必ずしも当てはまるとは限らない。もっと、周りを見て下さい。どんな性格の人があなたのまわりにいますか?その人は何が得意で苦手ですか?人にはそれぞれ適職があります。どうか考えて欲しい。あなたが思う程、その人は弱くないし頑張っていると思う。人にはそれぞれペースがあります。分ってあげてください。あなたがどこの国に住んでいても日本人の心を忘れないように一言!あなたは俺のためにと言った。けれど漢字を思い出してください。「人の為と書いて『偽り(いつわり)』と読むと言う事を...」

そんな訳で、1年と5ヶ月働いた我が店を引退する事になりました。シェフの道の購読者の方がニューヨークにお越しの際はぜひ来て欲しかった店はもうありません。あの幻の餃子も、ステーキも。本当にごめ んなさい。と、言う事で次の100話でシェフの道は感動の幕を降ろす事になりました。今まで本当にありがとうございました。最初から購読してくれていた方ありがとうございました。そして、たくさんのメールありがとうございました。みんなぁ〜感謝するのだぁ〜!それでは次の最終回は2001年10月29日(月曜日)の発行です。それまでバイバイなのだぁ〜!!!

追伸:がっかりするのはまだ早い!100話はサプライズがあります。乞う御期待なのだ!それでは再びバイバイなのだぁ〜!!!